住宅ローン控除を受けるには確定申告が必要です。初めてだと難しく感じる人もいるかもしれません。しかし必要な書類と申告書の作成手順さえ押さえておけば、比較的スムーズにできるはずです。初めてでも迷わず確定申告できるよう、ポイントを解説します。
住宅ローン控除とは
住宅ローン控除は購入した住宅へ期間内に引っ越したときに利用できる制度です。具体的にどのくらいの控除を受けられるのでしょうか?また制度の利用に満たさなければいけない要件も見ていきましょう。
年末残高の1%が控除される仕組み
差し引かれる控除額は住宅ローンの年末残高を元に計算します。「年末残高×1%=控除額」です。例えば年末残高が3800万円あるとしたら、控除額は38万円と求められます。
ただし上限は40万円と定められているため、ローン残高が4000万円を超える場合の控除額は40万円と一定です。残高が多いほどたくさんの控除を受けられますが、上限がある点に注意しましょう。
計算で求めた控除額は所得税から差し引かれます。控除額が38万円であれば所得税が38万円減額される仕組みです。また所得税から控除しきれなかった金額は、住民税から差し引かれます。
住宅ローン控除の適用要件
ただし住宅ローンを契約すればどのようなケースでも控除を受けられるわけではありません。下記の適用要件を満たしているケースでのみ控除を利用可能です。
- 新築か取得から6カ月以内に引っ越し、適用を受ける年の12月31日まで住み続ける
- 合計所得金額3000万円以下
- 住居の床面積は50平方m以上で、1/2以上が居住用
- 住宅ローンの返済期間は10年以上
- 以前住んでいた住居などの売却時に長期譲渡所得の課税の特例などを利用していないこと
例えば購入から1年後の引っ越し・床面積が40平方m・返済期間が8年間など、要件を満たしていないときには、住宅ローン控除の対象外です。
住宅ローン控除を受けるには確定申告が必要
加えて住宅ローン控除を受けるには「確定申告」をしましょう。確定申告は所得税の申告・納税方法です。会社員であれば通常年末調整でできますが、住宅ローン控除を受ける最初の年は年末調整による手続きができません。
そこで住宅を購入した翌年1月~3月15日の間に、必要書類を用意して税務署へ提出します。書類に不備がなければ手続き完了後1カ月~1カ月半後を目安に、指定口座へ控除分の金額が振り込まれます。
参考:No.1213住宅を新築又は新築住宅を購入した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
確定申告の手順
会社員として働いている人は、初めての確定申告で何から始めればよいか分からないかもしれません。しかし必要な書類と手続きの手順を押さえておけば、確定申告は自力でできる手続きです。
必要書類を用意する
まずは下記に挙げる必要書類を全てそろえます。先に書類を用意しておくと、提出はもちろん確定申告書の作成もスムーズです。
- 確定申告書:税務署か国税庁のホームページで取得
- 住宅借入金等特別控除額の計算証明書:税務署か国税庁のホームページで取得
- 源泉徴収票:勤務先で発行されたもの
- マイナンバーが分かる書類:マイナンバーカード・通知カード・住民票の写しなど
- 土地・家屋の登記事項証明書:法務局で取得
- 不動産売買契約書や工事請負契約書:不動産会社や施工会社と取り交わしたもの
- 年末ローン残高証明書:銀行から10月頃に送付されるもの
確定申告書にはAとBの2種類があります。会社員で給与所得・雑所得・一時所得・年金以外に所得がなければ、項目数の少ない確定申告書Aの方が記入しやすいでしょう。
確定申告書を作成する
書類をそろえたら確定申告書を作成します。一つずつ計算し手書きで順番に書き込んでいく方法の他、自動計算が可能なインターネット上の「確定申告書作成コーナー」を利用しても良いでしょう。手順は下記の通りです。
- 確定申告書作成コーナーの「作成する」をクリック
- 提出方法を選択
- 利用規約に同意し「次へ」で進む
- 申告書を作成する年を選び「所得税」をクリック
- 集めた書類をもとに必要事項を記入
確定申告書作成コーナーでは入力した情報の保存もできます。1度に全て作成できないときには、保存しておくと途中から作業を再開でき便利です。
税務署へ提出する
作成した確定申告書と用意した必要書類は税務署へ提出します。提出方法は下記の3種類から利用しやすいものを選びましょう。
- e-Taxで提出(マイナンバーカード方式)
- e-Taxで提出(ID・パスワード方式)
- 印刷し提出
事前にマイナンバーカードや、税務署が発行するIDとパスワードがあれば、e-Taxを使いインターネット上で確定申告書を提出できます。どちらも発行までに時間がかかります。インターネットで提出する場合にはあらかじめ用意しておくとスムーズです。
作成した確定申告書を印刷し提出するには、窓口へ持参するか郵送します。確定申告時期の混雑を避けるには、郵送が便利です。
確定申告を忘れたら5年以内に申告を
住宅ローン控除を受けるには、住宅を購入した翌年の1月~3月15日に確定申告をします。万が一この時期に確定申告をし忘れたなら「5年以内」に手続きをしましょう。
例えば2020年に住宅を購入した場合、2021年1月~3月15日に確定申告が必要です。忘れてしまったときには2026年までに申告をすれば、さかのぼって控除を受けられます。
2年目以降に行う手続き
1年目は必ず確定申告が必要な住宅ローン控除は、2年目以降どのような手続きが必要なのでしょうか? 必要書類とともにチェックしましょう。
会社員は年末調整で手続き可能
初回の手続きで確定申告をすれば、2年目以降は勤務先の「年末調整」で手続きできます。必要書類の取得や提出にかかる手間が1年目より少なくなり、短時間で終えられるはずです。
年末調整で必要な書類を提出し忘れたときには、1年目と同じように確定申告をします。
年末調整に必要な書類
年末調整で住宅ローン控除の手続きをするときには、勤務先へ「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」と「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を提出しなければいけません。
「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」は税務署から送付される書類です。控除を受けられる全期間分が確定申告の翌年に送付されるため、紛失に注意して保管しましょう。
「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」は1年目にも提出した書類です。毎年送付されるため、最新のものを提出すればOKです。
他にもある減税措置や給付金
住宅を購入すると住宅ローン控除の他にもさまざまな制度を利用できます。対象となる制度を有効活用できるよう、代表的な制度を知っておくことが大切です。
対象者は「すまい給付金」の手続きも忘れずに
下記の条件を満たす人は「すまい給付金」の手続きも実施しましょう。必要書類をそろえて申請すると最大50万円の給付金を受け取れます。
- 登記上の所有者
- 購入した住宅への居住が住民票で確認可能
- 消費税10%時の収入額がおよそ775万円以下
- 住宅ローンを利用しない場合は50歳以上
すまい給付金の給付額は、収入額や扶養家族の人数により異なります。公式ホームページでシミュレーションできるため、そちらを参考にすると良いでしょう。
参考:すまい給付金
その他の減税措置
減税措置の制度は住宅ローン控除だけではありません。他にも下記の通り複数の軽減措置があります。
- 登録免許税の軽減措置:登記に関する税率が軽減される
- 不動産取得税の軽減措置:不動産売買に必要な印紙税が軽減される
- 固定資産税・都市計画税の軽減措置:新築住宅を購入した場合に軽減される
適用される減税措置をチェックし、もれなく手続きしましょう。
住宅ローン控除を受けるなら確定申告を忘れずに
住宅ローン控除の利用には確定申告が欠かせません。通常であれば年末調整のみで手続きが済む会社員であっても、住宅購入の翌年には確定申告を実施します。
必要書類をそろえたうえで確定申告書を作成し、税務署へ提出しましょう。書類に不備がなければ、1カ月~1カ月半後に指定の口座へ所得税から控除された還付金が振り込まれます。
制度の対象であっても確定申告を忘れると控除を受けられない点に注意が必要です。確実に還付金を受け取れるよう、確定申告を忘れずに行いましょう。